写真日記帖 トップ > 第1期 暮らしの記憶[赤荻武さん]

写真の写真

2009年06月10日

 

世田谷に住んでたころに一度だけ行った耳鼻咽喉科は、かなり小汚い雑居ビルの中。

入るのをためらわすくらいに廃れた看板でしたが、発熱してたのでそのままくぐりました。

待合室は古めかしいストーブやソファ、造花などが途切れとぎれに灯る蛍光灯に照らされてます。

さわやかであるはずの風景写真は、色褪せてホコリまみれ。

しばらくして、受付の婆さまのぼそぼそとした声に呼び出されて診察室へ。

室内は暗く、窓の外から射すオレンジ色のネオンの光によって、

年期の入ったハイバックチェアと医療器具、爺さまのつるっとした頭と長い髭が浮かび上がります。

 あの、右の喉が痛いんですよ。

 あ〜、左ぃ、腫れてますね〜〜。

わたしにとっての「右」は、対面する先生にとって「左」。

 お前(医者)目線での診察かよ。

ささないなことかもしれませんが、

診療所のたたずまいも手伝って不安というか敗北感に満たされて待合室へ戻りました。

 

待合室でぼんやりしていると、目にとまったのは白鳥を写した風景写真。

そういえば、病院や診療所ではたいがい待合室に絵画や写真が飾られてる気がします。

でも、どこか不釣り合いというか違和感を拭えないものが多いような。。。

前の月の整形外科に飾られてたのは、

手足に包帯を巻かれたクマのぬいぐるみが満開の桜の木にくくりつけられた景色でした。

喘息で通ってた大学病院の小児科の壁紙のイラストの妖しさはトラウマに近いものがあります。

 

身体にあちこちガタが来て、かかりつけの病院が増えるほどよいコレクションができるでしょう。

老後の趣味をひとつ、見つけることができました。

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プロフィール
赤荻武さん
赤荻武さん写真家/パラパラまんが写真作家。1978生まれ。カメラを構えたくなるときは、「くたびれてるけど、まだまだ現役」な景色を見かけたとき。近著は「クリエイターのための3行レシピ 写真撮影のアイデア」(翔泳社)。
http://redoni.exblog.jp/
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