
JR中央線沿線の昔ながらの家が並ぶ静かな一角。ひっそりとしたたたずまいのお住まいにおじゃましました。通されたのは、井上さんのアトリエであり、“相方”と共に机を並べて仕事をしたり、おしゃべりする場。白い壁と木の腰板に囲まれたクラシックなたたずまいの中央に、石造りのマントルピース(暖炉の飾り棚)がある、広い洋館づくりのお部屋です。

井上さんはもともと油絵を専攻されていたそうですが、写真の方は写真部とか?
いいえ、写真を撮り始めたのはその頃ですが、バイト仲間の影響です。大学が京都だったので、お寺の彩色を修復するアルバイトをしていました。そこに写真好きが何人かいて。よく一緒に撮影旅行に出かけたりしました。といっても、みんな自分の好きなように撮りたいメンバーなので、目的地に着いたら、はい、解散!でしたが(笑)。

当時は、どんなものを撮っていたのですか?
今と同じですね。
植物や枯れ木、壁、古い建物や廃墟、何かの影…。形と色を頭にたたき込みたくて撮ることが多いですね。もともと抽象的なものが好きなんです。当時、廃墟や取り壊される建物を撮った宮本隆司の「建築の黙示録」に、大きな刺激を受けたのを鮮明に覚えています。
卒業後、東京で仕事を始められたのですね?
アルバイトをしながら、書籍や雑誌などに装画のイラストを描いていました。
ところが、絵を描くこと自体は好きなんですが、仕事としてイラストを描くことが自分の中でキツくなってきて。一方で、写真とコラージュ※を合わせた作品を作っていたので、2005年から意識的に自分のやりたかったクラフトの方へチェンジしていったのです。
※コラージュ:
さまざまな素材を組み合わせ、画面に貼り付けて表現するアートの技法。井上さんの作品は紙素材にこだわったペーパーコラージュ。
その頃、クラフトにシフトする追い風があったのでしょうか?
私が東京に来た10年前の頃は、今のようにクラフト作品はメジャーではなかったのです。ちょうどクラフトの作品をお店に置いてもらうように営業に回りだした頃、手作り雑貨や作家もののグッズが雑誌に取り上げられ、注目が集まるようになりました。今は作品を作る仕事と雑誌の仕事が両立でき、アルバイトなしでやっと一本立ちできるようになったのです。
コラージュ&写真を留める
井上さんはマスキングテープをフルに使いこなしてきた人。油絵を描くとき、絵の具をのせたくないところに貼るもともとの用途のほかにも、壁にメモを留めたり、付箋代わりにしたり。これは井上さんのペーパーコラージュ作品を集めたポスターカレンダー(発売:マークス)。個々の作品にも、写真を無造作に留めたところにも、マスキングテープが効果的に使われています。
![refocus[+] 暮らしと、写真と。](/misc/ci.jpg)







![[話し手]井上陽子さん(クラフト作家)](img/inoue_main.jpg)








